「笑い」について
いきなりだが、「笑い」について考えてみたい。我々は、何かがおもしろおかしいと「笑う」。「くすくす笑い」だったり、「泣き笑い」だったり、「大笑い」だったり、笑い様は、場の状況等によってさまざまである。また、「笑う」は動詞としての「笑う」に加え、名詞の「笑み」、や形容詞の「微笑ましい」など実にバリエーションに富んだ言葉だ。
たまたま見つけた「ジョブカフェあおもり」というホームページがある。ここに、大変興味深い記事が掲載されていた。それは、「笑い」という行為には多くの効能があり、主なものだけでも、①脳の働きが活性化される、②血行が促進して新陳代謝や自立神経のバランスが整う、④筋力がアップする、⑤幸福感と沈痛作用がある、の5つが紹介されている。「笑い」が健康を増進し維持する上で大変効果的な行為であることは、私もなにかで読んで知っていた。
「笑う」ことは、ストレス解消にもつながる。読書をしていておもしろい話に出会うと、無意識に「くすっ」とわらう。「くすっと笑う」だけでも一瞬気持ちが落ち着くように感じられる。落語やマンザイが大好きな人なら、それらを聞きながら「腹をかかえて笑い転げる」といった表現もある。その時間はどんなに楽しく幸福感に浸れることか。また、写真で明るく、楽しく、微笑んでいるモデルを見ると、こっちまで気持ちが癒やされる。
私は、「笑う」、「微笑む」と言った言葉が好きだ。「笑い」はポジティブな要素を多く含んでいて、周囲をぱっと明るく、ほっとさせてくれる不思議なパワーを内に秘めている。
かつて、私のように視覚と聴覚に障害があり、毎日の生活に苦慮している人たちのために「みんなで集う場」を造り、「すまいる」と名付けた。英語のsmileをわざとひらがな表記にしたもので、「この集いから笑顔がたくさん咲くことを願って」という意味を込めた。かつては重度重複障害者のイメージカラーは「黒に近い灰色」だった。そんなイメージを払拭したいという願いを込めて付けたネーミングで、今でも気に入っている。
その「すまいる」では年に何度もイベントを企画し、多くの仲間を募っていた。あるイベントを企画した時の案内用チラシに、こんなフレーズを織り込んだことがあった。
「笑門来福」。「笑う門には福来る」である。
「笑う」を冠した熟語もいろいろある。そしてそのほとんどがポジティブな意味合いを含んだものだ。中でも、「笑門来福」はその当時の「すまいる」の活動にはぴったりの言葉ではなかったか。「ここには楽しいことがいっぱいありますよ!ここへ来るときっとあなたも幸せになれますよ。だから、友人を誘い合わせて、是非いらしてください!」そんなふうに呼びかける。「すまいる」のイベントに沢山の人に参加してもらい、「すまいる」のことやそこで活動する障害者について理解を深めてもらいたかった。そのために考えついた言葉だった。おかげで、イベント当日は人でごったがえし、笑いがあちこちに充満していた。恐ろしや、言霊!
数年前、友人と何気なく入った居酒屋で、好きな生ビールを一口飲みながら、料理をつついていた時。「うーむ、このお店、うまいねえ」
友人に店の名前を聞いてみた。「一酔万笑」だった。ここにも「笑い」がある。「ほどよく酔っぱらって、たくさん笑う、ことで、次の日も元気にがんばるぞ」ということか?
「笑い」は百薬の長なのだ。