7月25日著者インタビュー・門川紳一郎さん『ぼくのデフブラらいふ』
今週の本棚・著者に聞く
門川紳一郎さん ルビ「かど かわ しん いち ろう」
ぼくのデフブラらいふ ころから・2200円
見出し
「夢があれば頑張れる」盲ろう
目が見えず耳も聞こえない。著者にとってはそれが普通だ。書名の「デフブラ」とは、全盲全ろう者(デフブラインド)を指す。
勤め先の全国盲ろう者協会(東京都新宿区)でのインタビュー時は、著者の脇に介助者として妻由美さんが座り、記者の質問を「指点字」で同時通訳してくれた。盲ろう者の両手に介助者が手を重ね、点字タイプライターの六つのキーを打つ要領で指を動かし、点字をイメージしてもらうことで情報を伝える。
著者は関西のイントネーションで穏やかに話す。「本を書いた動機ですか。マラソン大会に出るため走り込んだら足を痛めてしまい、2カ月の入院中が暇だったからですよ」と照れる。しかし本書の「まえがき」では四つの動機を真っすぐに記す。多様性が叫ばれる社会でさえ、盲ろうという重複障害者の存在がよく知られていないこと。盲ろうの当事者による著作が極めて少ないこと。自身の人生の記録を残そうと思ったこと。自分の考えを自分の言葉で発信したかったこと――。
小中高は盲学校で過ごし大阪の大学に進学、米国の大学院で学び多くの知己を得た。帰国後は一貫して盲ろう者のための活動を続ける。さらに、日々ブログを書き、プログラミングを楽しみ、水泳大会に出場する。障害があってもなくても超人である。
「不可能なことは努力すれば可能になる」が座右の銘。頑張りすぎてしまう性分だが「人生前向きになれることばかりじゃないですからね。悩んでいる人がこの本を読んでプラスに感じてくれたらいいのですが、負担に思われたら……」と顔を曇らせる。
ふと「そういえば面白いアプリを見つけましてね」。機器からなされる説明が具体的で、風景が見えなくても写真を撮影できる。これからは写真を楽しみたいし、人にも勧めたい。「夢があれば頑張れる。夢に向かって進んでいきたいです」。足元で盲導犬のアーチがちらりと澄んだ目を向けた。文と写真・浜田和子

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