東村山市の盲導犬ユーザーが市長を表敬訪問
生き生きプラザの前に到着したのは、集合時間より少し早い15時25分だった。ここは、障害支援課がある東村山市役所である。障害支援課の前で待ち合わせることになっていた。集まるメンバーは、ぼくのほか、市内に住む盲導犬ユーザー二人、日本盲導犬協会の職員二人、そしてぼくの通訳者で、総勢六人だった。いや、盲導犬ユーザーにはパートナーもいるから、プラス三頭ということになる
市内では初めて
ぼくたちは、東村山市長を表敬訪問するために集まった。盲導犬ユーザーが市長を表敬訪問するのは、東村山市では初めてのことらしい。しかも、同じ市内在住のユーザーとパートナーが全員そろうのも珍しいことのようだった。
市長との面会時間は16時から16時30分と聞いていたので、時間には十分余裕があった。その間、日本盲導犬協会のスタッフから、ぼくたちユーザー三人が市長に話す内容について確認があった。それぞれ役割分担をしながら、多くのことを伝えようという趣旨である。ちなみにぼくは、「盲導犬ユーザーには加齢による難聴者や、自分のような盲ろう者がいること」「話しかけるときは、まず合図を体に伝えることから始めてほしい」という点について話すことになった。
ユーザー一人ひとりが市長へ話をした内容は
やがて移動の時間となり、障害支援課の職員の先導で市長室へ向かった。エレベーターで三階に上がり、市長室まで吹き抜けの周りをコの字型に歩く。緊張していたのだろうか、実際よりも遠く感じられた。そして、市長室に着いたころには、すでに汗が噴き出していた。
約束の16時ちょうどに、渡部尚・東村山市長が入室された。ぼくのほぼ左前に着席され、歓迎の言葉を述べられた。その後、日本盲導犬協会のスタッフの進行で、面談は和やかに進んだ。
一人のユーザーは、街で迷ったり困った様子の人を見かけたときには、遠慮なく声をかけてほしいと話した。パートナーと歩いていても、周囲からの声かけは大変心強いものだという。もう一人は入店拒否の問題を取り上げた。啓発活動のおかげで少しずつ理解は広まってきているものの、いまだに入店を断られることがあるという。身近な例では、コンビニに入ろうとした際に「犬はだめ」と言われたことがあったそうだ。また、外国人、特にアジア系の店員において、日本の文化や盲導犬への理解が十分でないためか、「ドッグだめ」と断られるケースもまだ見られるという。
熱心に話を聞いてくださった
市長からも、「盲導犬の訓練にはどれくらいの期間が必要ですか」「犬は足りていますか」「ユーザーと犬のマッチングは大変でしょうね」など、次々と質問があり、盲導犬への関心の高さがうかがえた。
視覚障碍者のガイド体験をしてもらう
面談が一段落したところで、今度は市長に「視覚障害者をガイドする体験」をしてもらった。盲導犬協会の依頼で、ぼくがガイドを受ける役をすることになり、左手にアーチ型のリードを持ち、右手で市長のひじをつかんで、室内から出入口までのほんの数メートルではあったが、市長と歩いた。ガイドの経験があるかのように、とても慣れた様子だった。
訪問を終えて
気がつくと予定の時間は過ぎ、17時前になっていた。最後に市長を中心に集合写真を撮影し、懇談は終了した。
ほかの二人のユーザーと挨拶を交わし、帰路に就いた。帰り道、ぼくはふと思った。たとえ短時間でも、行政のトップに私たちの生の声を伝えることには大きな意味があるのではないか。市長も、ぼくたちの話から何かを学んでくれたのではないか。そして、トップから草の根へと種がまかれれば、それだけ理解が社会に広がっていくのではないか。
視覚障碍者2人と盲ろう者から行政のトップに直接話ができた意義は大きいだろう。
自宅に到着するころには汗びっしょりになっていた。それは、「今日一日やり切った」という実感に満ちた、心地よい汗だった。


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